ウルトラマンがすぐ光線を撃たない理由

ウルトラマンはなぜ変身直後に必殺の光線を撃って怪獣や宇宙人をやっつけることをせず、わりと制限時間いっぱいまで戦ってから光線を撃つのでしょうか?僕がまだ小さかったころに親しんでいたウルトラ作品を最近になってぽつぽつ見返すようになった今、考えたことがあります。それは、

 

ウルトラマンは敵と複数回接触して倒すのに最適な光線の性質を決定してから撃っている

 

ということです。この仮説について詳しく説明したいと思います。

 

 

御存じの通り、ウルトラマンは悪の怪獣や宇宙人から人類を守ってくれる正義のヒーローです。その戦う相手は地球に元々いた怪獣だけでなく、宇宙からやってきたり、変わった武器を持っていたり、未知の元素でできていたり、異次元に住んでいたりと様々です。戦う場所だって地上や空中はもちろんのこと、水中や宇宙空間、はては異次元空間、さらにはもはや現実世界ではなく誰かが作った物語の世界などで戦わされることだってあります。本当に毎週お疲れ様って感じです。

 

そんな数限りない種類の相手・数限りない種類の戦場の全てで敵を倒すことができる全く同一の光線なんてあるはずがありません。きっと同一の技名ながら撃つ相手によって波長スペクトルや一緒に飛び出しているかもしれない物質の配合などを色々と調整しているのでしょう。しかし、流石のウルトラマンも、初めて戦う相手を見ただけで最適な光線の成分を決めることはできません。相手の体表がどんな物質でできているかは、実際に接触しないと分からないでしょう。それなら適当に敵の表面をタッチするだけで良いではないか、という意見もあると思います。しかし、その触る行為がちゃんとパンチやキックなどの戦闘動作でなければならない理由が3つあります。

 

第一に、ウルトラマンが怪獣や宇宙人を触るのは、僕たちが動物園でうさぎの羽毛をサワサワするのとは訳が違います。相手は人類やウルトラマンに対して明確に敵意を持っている場合がほとんどです。気安く体を触ることは難しいはずです。ならば力ずくでも触りに行くしかありません。それがパンチやキックなどの戦闘動作となって表れているのです。

 

第二に、対象を強打することによって表面の弾性や、場合によっては内部の様子も知ることができます。優しくそっと触っただけでは、その表面がどのくらいの強さで凹むのかが分かりません。また、柔らかそうな部分に強めのパンチをしたのに中に固そうな手ごたえがあった場合、「オッ、コイツ見た目はフニャフニャだけど中の組織はかなり頑丈なんじゃないか」というように分かります。また、相手の体表が強い衝撃に反応して瞬間的に固くなる防弾チョッキのような性質を持っている場合にも、気づくことができます。

 

第三に、相手の運動能力を知ることができます。敵を倒すのに最適な光線の成分が決まっていざ発射したところで、実は相手がかなりすばしっこいヤツであっさりかわされてしまった、となったら大変です。そこで、相手の敏捷性などをチェックするためにパンチやキックなどの相手に体を激しく動かす必要を生じさせる動作を繰り出しているのです。

 

ウルトラマンが時間いっぱいまで戦っている理由も説明できます。相手の体表がもし時間によって変化する性質を持っていたらどうでしょう。せっかくの光線も変化した相手の体表に弾かれてしまってパーになるかもしれません。一度接触してからさらに時間を空けて接触することで、自らの解析に間違いがないことを確かめる必要があります。

 

また、今まで戦ってきた敵が実は悪いやつではなく倒す必要がないことが、戦っているうちに判明することもあるかもしれません。「その怪獣を殺さないで」と、その怪獣と仲の良かった少年がウルトラマンに訴えかけてくるケースもあります。なるべく時間をかけて怪獣や宇宙人の相手をすることで、倒す必要のないものを倒してしまうという悲劇を防ぐ効果もあるのです。これは敵に対して「執行猶予」を与える、ウルトラマンの優しさともとれます。

 

このように、「ウルトラマンは敵と戦闘動作を通して接触することで敵を倒すための光線の成分を決定している」と考えることでウルトラマンの変身後の行動について理解を深めることができます。ちなみに胸のタイマーが単に制限時間を示すものではなく、自身の残りエネルギーと光線の成分の決まり具合がちょうどいい塩梅になった「撃ちどき」を示すものと考えれば、点滅するまでの時間や点滅してからの時間にバラつきがあるのも納得がいくと思いませんか?

 

しかし、今したような説明を番組で毎回するのは長いので、「ウルトラマンは地球上で3分しか戦えない!胸のタイマーが鳴ったら必殺技でやっつけろ!」という趣旨の、子供にも分かりやすい説明がなされているのだと思います。