よこハウス11/9現在の音楽再生環境

 ......と友人に聞かれたので答えます。まず現状の再生システムについて電源から末端のスピーカーまで順番に紹介していきます。その後で部屋全体の環境について音響的な工夫点を紹介します。多分この友人はここまで詳細な説明を求めてないと思いますが、せっかくの機会なのでつぶさに書きます。写真の画質が全体的に悪いのを残念に思っています。

  

 

0.概略

主要な機器の配線図です。電源は省略しています。

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1.電源

音響機器と、それと電気的に接続される機器(すなわちPC周辺機器全て)は全て1か所の壁コンセントから電源を取っています。個人的に雷が怖いので雷サージ対策を穴ごとに3重に施しています。過剰防衛だと思いますが、こういうのは好きなのでついついやってしまいたくなります。

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写真に写っているのは壁コンセントと雷防御第一段階の3口タップです。養生テープは埃避けです。帰省などで長期間部屋を開けるときや雷が鳴っているときなど以外は差しっぱなしにしています。画像は割愛しますが、この2つの3口タップからそれぞれ雷サージ対応の6穴テーブルタップ(雷防御第二段階)が伸びています。そのうち1穴ずつは雷ガード(最終防衛ライン)を差してあるので、合計10穴使えます。雷ガードに近い方からなるべく最悪壊れてもいい順になるように各種機器のプラグを接続してあります。

集合住宅なので、アースはつないでいません。機器のアース線同士の接続もやってません。また、音響機器の電源は片方のテーブルタップに集約しています。以上の(雷以外の)電源周りの接続は記事最後で紹介している文献を大いに参考にしました。

 

 

2.PC

無駄にメモリを64GBも積んでいます。OSはWindows10で、CPUをAMD Ryzen7 3700Xにしているのですが、Windows対応でもAMD製のCPUでの動作を保証していないオーディオインターフェイスとかがたまに存在するのを知ってちょっと後悔しています。CDプレイヤー等は使っていないので、音楽はCDも含めて全てこのPC上で再生しています。このPCからは49鍵のMIDIキーボードとオーディオインターフェイスがつながっています。MIDIキーボードから先は何も繋がっておらず、再生上も関係ないので説明を省略します。ちなみに開口部には換気扇フィルタを貼って埃の進入をある程度防いでいます。

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3.オーディオインターフェイス

まず、オーディオインターフェイスとは何かについて簡単に説明します。一言でいえばPCに接続するサウンドボードです。内蔵型のものもありますが、多くはUSBケーブルでPCと接続する外付け型になっています。PCにもともとついているサウンドボードに代わって、D/A変換などのオーディオに関する処理を担当します。D/A変換とは音楽のデジタルデータをアナログの電気信号に変換することで、このD/A変換の品質が再生音質を左右します。1万円程度の安いモデルであってもPC付属のサウンドボードよりは音質が良くなると言われており、検索すると入門者向けのおすすめオーディオインターフェイス記事などがいくらでもヒットします。また、オーディオインターフェイスにはマイクやギターなどの音をミックスしたり録音したりといった、音楽制作上重要な機能も搭載されています。人によってはこちらの方が重要な点かもしれません。とりあえず僕はこれらの特徴を総合してオーディオインターフェイスを「外付けサウンドボード」とらえているわけです。

 現在僕が使っているオーディオインターフェイスSteinbergのUR22Cというもので、1万円台で買えるエントリーモデルです。現在PCから伝送されるデジタルオーディオデータはここでアナログ信号に変換しています。ちょっと前までRoland Rubix22というほぼ同程度のモデルを使用していたのですが、訳があって最近高校同期が買ったこのUR22Cと交換して使わせてもらっています。両者の音質の違いは耳がバカなので正直分かりませんでした......

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入力がと出力が2チャンネルあり、入力にはマイクを1本差しています。マイクは2000円台の安いダイナミックマイクで、型番などは省略します。オンライン授業でしゃべるときに使っています。出力は1系統のステレオとして後述のグラフィックイコライザに接続しています。これの接続ケーブルは、1本2000円台のTRS-XLRオスのバランス接続を採用しています。店頭で買ったので型番とか値段は全部忘れました。

並行した2本のケーブルは導体リングを形成し、多分誘導起電力によるノイズの原因となります。そのため2本をねじって囲む面積を最小にしています。ねじってあることで裏表が入れ替わるので、いい感じに打ち消しあっていてほしいです。ねじるのが最適かどうかは電磁気学の知識に乏しいのでよく分かりません。詳しい人がいたら教えてください。

 

 

4.グラフィックイコライザ

グラフィックイコライザとは、入力の波形信号に対して予め決められた周波数帯の成分の量を任意に増減して出力する機器ないしソフトウェアです。僕が使っているdbxの215sはアナログ信号に対してこの処理を行う機器で、2チャンネル15バンドのものです。すなわち、2つのチャンネルに対して15種類の予め決められた周波数成分の量を増減することができます。そのためフェーダーが30個ついています。

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何やら宙に浮いているようにも見えますが、両端をラックにネジ止めして固定しています。また、板ではなくて奥行が10cm少々あります。19インチラックマウントとかいって、ネジ穴の幅が19インチ(48センチくらい)に決まっているこのような規格の機器は、専用のラックに固定することができます。ネットサーフィンする限りオーディオ機器とサーバーに見られます。先ほど紹介したオーディオインターフェイスにもこのラックマウントに対応した形状のものがあります。メチャメチャ扁平でかっこいいです。

さて、このdbx 215sに何をやらせているかというと、大きく3つあります。こうやって挙げてみるとこの再生系で一番仕事をしている気がしてきました。

1つ目は、部屋の音響特性やスピーカーの周波数特性に合わせた補正です。可聴域の全周波数帯において等しい音量を持つホワイトノイズという雑音を再生してマイクで録り、その周波数スペクトルを見ながらフェーダーを動かして調整を行う......のですが、マイクが安物だし、間違えてスペクトルが右肩下がりで調整しづらいピンクノイズでやってしまったので、現状では無意味な調整になってしまっています。でも正直違いがよく分からないしフェーダーの位置にバラつきがあると見た目が嬉しいので放置しています。

この周波数特性の調整は、デジタル出力を備えたミドルエンドのオーディオインターフェイス、より自由度の高い調整が可能なデジタルイコライザ、信頼できるRTAコンデンサマイクの3つが揃ったときにもう一度挑戦します。この調整で本当はかなり音が変わるらしいので楽しみにしています。

2つ目は、聴覚補正です。数か月前にたまたま耳鼻科にお世話になったときの聴力検査によると、自分の聴覚には高域ほどほく聞こえている(低域の聴力があまり良くない)という周波数特性があることが分かりました。そのため高い周波数の音を適当に削ってより健常な聴覚で聴いたときの音に近づけようとしています。

3つ目は、左右のスピーカーの音量バランスの調整です。ステレオの各チャンネルごとに音量を調節できる箇所はこのdbx 215sのINPUT GAINつまみと各スピーカーの音量つまみしかありません。前者の方がはるかに細かく調節できるので、後者は左右で同じ値にしておきこちらで調整しています。モノラル音源が2つのスピーカーのちょうど真ん中から聞こえてくるように片方のつまみをコリコリと回していきます。

このdbx 215sの出力の先にやっとスピーカーが接続されます。ケーブルには2mのXLRケーブルを採用しています。カラーリングは航空機や船舶の舷灯にならってLを赤、Rを緑にしてみました。

 CANAREのEC02Bです。1本2000円しない代物ですがまあいいでしょう。

 

 

5.スピーカー

 いよいよスピーカーです。パワードスピーカーなのでアンプは不要です。

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原音になるべく忠実に再生することに特化したモニタースピーカーの定番として有名な、JBLの305P MkIIです。スイートスポットと呼ばれる「音がいい感じに聴こえる空間領域」が広いことが特徴だそうです。モニタースピーカーという種類自体には周波数特性が平坦である(作為的な重低音強化みたいなことをしていない)、音像定位がはっきりとしているなどの特徴があるみたいです。ちなみに定番だから買ったのではなく、定番で安くなっていたので買いました。1本1万円ちょっとです。後ろにフィルタースイッチが2つくらいありますが、特に何もせずデフォルトのままにしてあります。サブウーファーはありません。

スピーカーの設置について、水平位置だと頭部とスピーカーが正三角形になるように置き、スピーカーが両方とも30度内側を向くように置くのが良いと言われています。高さは耳とツイーター(スピーカーの上半分にあるより小さい振動子)が同じになるようにするのがいいとどこかで見ました。普通に座ったときにこれらの条件がうまく達成されるように位置合わせをしてあります。壁からある程度離して置くべきという話も見かけましたが、配置的に難しいので見送っています。

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また、それぞれのスピーカーはインシュレータという振動を吸収するための小道具と、位置決めも兼ねている木板とゴム板を張り合わせたものを介して自作の木製モニター台に乗っかっています。このインシュレータとゴム板のおかげで、下のモニター台は全く振動しません。ちなみに、上にソフビとかプラモとかが乗っかっていますが、特に意味はありません。ただでさえ不足している水平面を有効に活用した結果です。

このスピーカー、1本5kgくらいあるのでモニターと合わせてモニター台にかなりの荷重がかかっていることになります。実際中央が6%たわんでいます。割れたりヒビが入ったりしないように毎日お祈りをしています。

 

 

6.部屋全体について

スピーカーは空気の振動を励起し、部屋の中に様々な振動モードの定在波を生じさせます。また、壁や家具などから反射した音は直接くる音より遅れて耳に到達します。これらを完全に取り除く必要はないのですが、リスニングポイントにおける周波数特性に大きく影響する因子は取り除くに越したことはありません。僕はとりあえず、明らかに音を反射しまくりそうな鉄製のドアに吸音材っぽいものを貼ったり壁際に物をたくさん配置したりすることで、音の吸収や散乱に一役買わせたつもりになっています。また、窓ガラスもドアと同じく音を反射しまくりそうなので、カーテンは昼間もずっと閉めています。この辺の対策は実際どれほど効果があるのかよく分かりませんが、本やインターネットを参考にしながらできることは何でもやってみています。

 

 

7.今後の展望

引っ越しが遠くはないので、スピーカーなどの巨大な機器を買い替えるようなことはあまりしたくないです。先にちょっと書いたようにオーディオインターフェイスとイコライザ周りをもう少しなんとかしてやるのが予算的にも現実的な方針だと思っています。また、電源に交流安定化電源を導入するのをやってみたい気持ちがありますが、予算が莫大になるので当分かないっこありません。いずれにせよ音楽制作を趣味にしているという関係上、自分の好みの音を追求することよりも原音をいかに忠実に再現するかを優先して心を砕いていくという方向性がぶれることはないと思います。予算の問題とも一生戦い続けると思います。

 

 

8.参考にしている文献

読んだ本を何冊もピックアップするのはめんどくさいので、特に人におすすめしたい一冊を紹介します。実際この一冊で足りています。

 岡野邦彦:その常識は本当か これだけは知っておきたい 実用オーディオ学, コロナ社 (2019)

オーディオ愛好家でもある慶応大学理工学部の先生が、室内音響を中心にオーディオを楽しむための様々な工夫を科学的に説明された本です。電源の接続、機器同士の配線などはこの本の内容を大いに参考にしてセッティングしました。理系の総合読み物としても面白く、少なくともわざわざこんな記事を読むような人には絶対におすすめできます。