真鍮線で作る! 戦艦長門の後部マスト

ある木曜日の午後、いつものように戦艦長門の1/700プラモデルを作りながら講義を聞いていた。出席フォームを入力しようとキーボードに手を伸ばした際、誤ってマストを折ってしまった。座学の実害である。そもそも艦船模型のマストというのは、太さ0.5mm程度の細いプラ部品でできているというだけでも十二分に折れやすいのに、往々にして先端が一番高い位置にくるから、とにかく手とかをぶつけやすい。

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しかし、マストが金属線でできていれば立場は逆転する。やられるのは手の方である。手の怪我は簡単に治せるが、一度折れたマストを直すのは難しい。ならば金属線で折れないマストを作るしかない。

まずはトップの十字架部分を作る。0.4mmの真鍮線を適当な長さに切り、カッターマットにマスキングテープで直角に交わるように固定する。そこまでやったのが下の写真だ。

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この状態で交点をはんだ付けする。フラックスは使っていない。はんだ付け中の写真は撮れないので、ない。カッターマットが熱に負けてしまい、下になっている横向きの真鍮線がめり込んでしまった。

次に、今作った十字架部分と接続する太い柱を同様にはんだ付けする。太い柱には0.8mmの真鍮線を用いた。今度は2本の真鍮線をクリップで挟んで空中に固定してみる。調整にメチャメチャ手間取った。

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ちょっと分かりにくいが、写真の左側のクリップに挟まれているのがさっき作った十字架部分だ。この十字架の交点から右側にしばらく進んだあたりで、写真右端からずっと伸びてきている太い真鍮線と数mmほど接触しているのが分かるだろうか。この接触部分にはんだを流し込んで固定する。

最後に、この太い真鍮線にも十字架の横棒をつける。これでマストがカタカナの「キ」のような形になる。横棒にはトップの十字架と同じ0.4mmの真鍮線を用いた。

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先ほど真鍮線がカッターマットにめり込んだ失敗から、横棒の下にマスキングテープを貼って保護している。この交点を先ほどと同様にはんだ付けする。余談だが、付けすぎたはんだは吸い取り線で処理すると綺麗に仕上がる。

余分に長い部分をカットすれば、めでたく金属マストの完成だ。いつの間にか講義が終わっていた。元の折れてしまったプラマストと並べて記念撮影。

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はんだ付けをした部分の見た目がちょっと汚いが、塗装すれば問題ないだろう。このようにしてマストを金属線に置き換えることで、剛性が飛躍的に向上するだけでなく、太さにメリハリが出て格好良くなったり、テンションがかかってもしなりにくくリギング(マスト間に細い糸を張って電線を再現する作業)がやりやすくなったりする。かえって強すぎてぶつけたらこっちが怪我する以外、いいことしかない。ちなみに写真の右側にめり込み跡が見えている。

模型本体に当てはめてみたらこんな感じ。なお、基部の三脚部分はプラのままである。全金属化にもいつか挑戦したい。

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実際に取り付けるのは塗装してからになるだろう。今この記事を書いた手で軽く弄んでみても、まず折れる気配がない。この手の金属細工は本当に楽しいので、最後まで読んでくれた皆も、艦船模型を作るときに一度は挑戦してみてほしい。